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レポート:共同学術シンポジウム 「「妖怪」:もう一つの日本の文化コード」

共催:漢陽大学日本学国際比較研究所・国際日本文化研究センター

日時:2018年8月25日(土)14:30~

場所:漢陽大学校 国際館 画像会議室(6階)

出席者:70名

 

李康民(漢陽大日本学国際比較研究所所長)による開会の挨拶、小松和彦(国際日本文化研究センター所長)による趣旨説明のあと、研究報告に入った。

1部は、朴銓烈(中央大名誉教授)の司会で三人の報告があった。

木場貴俊(国際日本文化研究センター)「江戸文化の中の「妖怪」」は、妖怪を江戸文化(江戸時代の文化)の反映として、当時の出版、学問(儒学や本草学)、絵画表現、民俗の中でどのように展開していくのかを、ウブメという妖怪をモデルケースにして検討した。

金智英(漢陽大)「画家の想像力が駆け巡る楽しい遊びの場:河鍋暁斎の妖怪図」は、河鍋暁斎の『幽霊図』『地獄極楽めぐり図』などの表現技法を通して、彼にとって妖怪はどのように表現されるのかをその淵源とともに考察した。

近藤瑞木(首都大学東京)「「妖怪」を如何に描くか:鳥山石燕の方法」は、鳥山石燕の妖怪画を雅俗融和・言語遊戯・版画技法の視角から検討したもので、さまざまな図版を用いて、妖怪絵画史上の位置付けを改めて行った。

三人の報告終了後、李世淵(漢陽大)、片龍雨(全州大)、朴奎泰(漢陽大)によるコメントとそれに対する報告者の応答がなされた。

2部は、小松所長の司会で三人の報告があった。

韓京子(慶熙大)「韓国・日本における人面獣の展開」は、平昌オリンピック開会式に登場した人面鳥(迦陵頻伽)を手がかりに、東アジアの人面鳥獣の系譜を追究したものである。

松村薫子(大阪大学)「子ども絵本に見る妖怪観の変遷」は、子ども絵本に描かれた妖怪から日本人の妖怪観を考えたもので、江戸時代から現代までの約四百年にわたる長期的な流れを作家の意図と読み手の理解との差異にも注目しながら考察した。

李市俊(崇実大)「日本古代文学における「霊鬼」を韓国語でどう翻訳すべきか」は、日本の古典を韓国語で翻訳する際、鬼やモノノケといった妖怪に関連する語彙をどのように翻訳しているのかを、携わった仕事の事例も含めて紹介し、今後検討すべき問題点を提示した。

1部と同じく、報告終了後、金京姫(韓国外大)、崔泰和(光云大)、金孝淑(世宗大)によるコメントとそれに対する報告者の応答がなされた。

その後、フロアを含めた全体討論が行われた。そこでは、妖怪にとどまらず大衆文化をどのように考えていくべきかという方法論や文化を形づくる主体は誰かといった視座の問題など、参加者全員が今後考えるべき課題が多く出された。

最後に小松所長が、妖怪は現代日本の文化創造において重要な位置を占めているが、こうして人が親近感を持つ存在になったのは最近のことだとし、妖怪だけでなく大衆文化は時代を映す鏡であり、大衆文化を研究することで今までとは違った日本文化像・日本像を見ることができる可能性を持っていると述べ、シンポジウムを締めくくった。 (木場貴俊)