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大衆文化研究国際ワークショップ・シリーズ講座IN北京(オンライン)開催報告

11月24日(水)、12月7(火)日の2日間に渡り、中国の大学院生を対象に大衆文化研究に関するオンライン・シリーズ講座を開催し、日文研の教員が参加しました。
本シリーズ講座は、国際日本文化研究センター・機関拠点型基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」(以後、「大衆文化研究プロジェクト」という)の研究成果発信及び、本プロジェクトがひとつの目標として掲げる教育パッケージの提供に関して国際的な視点を得ることを目的として実施されたもので、過去には、2018年度に中国・北京、2019年度にフランス・パリにて開催されています。
残念ながら、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開催延期となりましたが、今年度は日文研と清華大学(中国)、北京師範大学の共同主催により、Tencent VooV Meetingを使用したオンライン講座として開催し、2日間を通して延べ約310名(1日目約170名、2日目約140名)の研究者及び大学院生の参加を得ました。
両日ともに各大学の講義室、オンライン上に若い学生たちが集い、各講義終了後には、学生からの活発な質問が寄せられました。

(各回の概要)
1日目には、前川志織特任助教及びエルナンデス・アルバロプロジェクト研究員による講義が行われました。
前川志織特任助教は、「大衆文化とグラフィック・デザイン:戦間期日本の洋菓子広告を中心に」と題して、日本の大衆文化におけるグラフィック・デザインの歴史を辿りながら、雑誌、新聞などに掲載された広告を取り上げ、分析を行いました。明治維新後、バターやミルク、砂糖を原料にする洋菓子が日文に流入しましたが、洋菓子を売るということは、そのような食材を日本の日常生活に導入すること、食文化の変化を促すことでもありました。そのような意図を持って制作された広告は、清潔さや健康などの概念を中心として、商品を売り出すものでした。洋菓子は広告によって新しい生活スタイル、近代そのものと結びつけられました。さらに「子ども」という観念のイメージ作りにもこうした広告が貢献しました。前川志織特任助教が紹介した数々の例から、広告文化の誕生、マス・メディアの使用、大量消費や国の文化的変遷等の交差を見ることが出来ました。
エルナンデス・アルバロ研究員は、「参加型文化と同人活動―初音ミクとニコニコ動画を事例に」と題して、ファン文化研究を中心とした講義を行いました。欧米、特に米国で発展されたファン文化研究論の基礎的な紹介を糸口に、米国ではファンによる自費出版を含む「参加型文化」と呼ばれた、大衆文化の「受け手」によるメディア創造活動について解説しました。さらに、人気キャラクター「初音ミク」によって広く認知されたボーカロイドによるアマチュア音楽創作活動の事例に辿り着くまで、日文研発行の『日本大衆文化史』(KADOKAWA、2020年)の戦後大衆文化を参考とした日本におけるアマチュア文化の概要を通しながら、米国のファン理論との類似点を踏まえた、日本における「同人誌活動」について解説しました。
2日目には、光平有希特任助教及び石川肇プロジェクト研究員による講義が行われました。
光平有希特任助教は、「日本をまとう音楽―19世紀~20世紀初頭の西洋大衆音楽作品がえがいた「日本」」と題して、西洋で出版された一枚刷りの楽譜(シートミュージック)に投影された日本イメージの変遷過程や楽曲の特徴について解説しました。今回、話題の対象とされた19世紀から20世紀初頭は機械化と大量生産の時代であり、そのなかで量産されていったシートミュージックは、ラジオやレコードが普及する以前、1920年初頭までの最も有力な音楽配信メディアとなっていました。音楽・装画・言葉という3要素で構成された日本表象シートミュージックには、万博の影響や同時代に西洋で巡業していた興行師の人気ぶり、さらに欧米留学者による日本文化・文学の紹介といった複数の人的、あるいは文物の交流から形成された日本イメージが如実に映し出されています。並行して、キリスト教伝来以降の滞日経験者たちが日本関係欧文図書で語った日本文化や歴史、音・音楽の記述といったものも、音楽作品には多分に影響を及ぼしており、光平有希特任助教は日文研が所蔵する様々な日本関係欧文史料を用いながら各楽曲の魅力について紹介しました。
石川肇研究員は、「鳥瞰図で巡る京都~大正の広重・吉田初三郎とタイムトリップ」と題して、昭和戦前期に旅行パンフレットとして用いられた吉田初三郎の「天皇陵」を描いた鳥瞰図を中心とした講義を行いました。旅行会社などによってパッケージ化(制度化)された「旅行」から、自分が本当に求める場所や目的にそって組み立てた自由意思(内面化)による「旅」の勧めであり、また、コロナ下で自由に日本に出入りできないこともあることから、大学的オンライン日本観光の意図も持ったものでした。初三郎の「天皇陵」を描いたそれは「歴代御陵巡拝図絵」(1928)で、大正天皇まで123陵を一目で巡拝できる貴重なものでした。その後、天皇陵巡りは鉄道や航路など交通機関の発達にともないブームとなりますが、日中戦争を契機とした国策と複雑に絡み合い、皇紀2600年(1940)に向かって大ブームへと押し上げられていきます。それは初三郎の一番弟子である前田虹映が、神武天皇陵とそれを祀る樫原神宮を中心として描いた「歴代皇陵官国弊大社敬頌絵」(1940)にもっともよく表れており、上記二つの鳥瞰図の比較から、冒頭の「旅行」から「旅」の勧めへと結論づけたものでした。

【プログラム詳細】

主催:清華大学、北京師範大学、国際日本文化研究センター・大衆文化研究プロジェクト
開催方法:オンライン方式
参加者:清華大学、北京師範大学、中国国内大学生、学部生など

■11月24日(水)中国時間14:30-17:30 (日本時間15:30-18:30)

司会:王 成(清華大学教授)

前川 志織(国際日本文化研究センター特任助教)
『大衆文化とグラフィック・デザイン:戦間期日本の洋菓子広告を中心に』

エルナンデス・エルナンデス・アルバロ・ダビド
(国際日本文化研究センター・プロジェクト研究員)
『参加型文化と同人活動―初音ミクとニコニコ動画を事例に』

コメンテーター
王 中忱(清華大学教授)、陳 朝輝(清華大学教授)

■12月 7日(火)中国時間13:30-16:30 (日本時間14:30-17:30)

司会:王 志松(北京師範大学教授)

光平 有希(国際日本文化研究センター特任助教)
『日本をまとう音楽―19世紀~20世紀初頭の西洋大衆音楽作品がえがいた「日本」』

石川 肇(国際日本文化研究センター・プロジェクト研究員)
『鳥瞰図で巡る京都~大正の広重・吉田初三郎とタイムトリップ』

コメンテーター
陳 鵬安(浙江財経大学博士)、程 茜(北京師範大学博士)

 

■広報用ポスター
 

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