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レポート:日本大衆文化シリーズ講座in北京③ 9/28

レポート:日本大衆文化シリーズ講座in北京③ 9/28

レポート:日本大衆文化シリーズ講座in北京③ 9/28

日本大衆文化シリーズ講座in北京第3回が、北京師範大学日文系で行われた。本日も、講義室は師範大学内及び学外の若い学生でほぼ満席となった。王志松・北京師範大学教授の司会により、劉建輝教授と安井眞奈美教授の講義が行われた。劉暁峰・清華大学教授によるコメントでは、劉教授の講義は、政策・制度の側ではなく、心的空間の変遷を語る空間論を、安井教授の講義は、科学に支配される現在の私たちの世界を相対化する身体論として語られたとして整理された。また歴史研究における図像の重要性も指摘された。

 

劉建輝「制度の歴史から感情の歴史へ――画像資料でたどる日本人の「満洲」幻想」

要旨:

日露戦争後、大連をはじめとする新たに獲得した権益の土地を目指して多くの日本人が中国の東北部に移住した。その数は終戦時の統計で言うとおよそ150万人にも達している。従来、この日本人移民の問題を取り扱う時、ほとんどの研究が主に政策や制度、または軍事や経済の側面からこれを考察してきた。しかし、はたして政府の政策や勧誘だけでこんな大規模の移住を実現することができたのだろうか。本講義では、日露戦争以来刊行されたさまざまな地図や旅行案内図、絵葉書などを素材に、これらの表象がいかにいわゆる「満洲」への幻想を作り上げ、そしてその幻想がいかに多くの国民をこの「新天地」に赴かせたかについて検証し、従来の政策や制度史だけに偏る方法論を正し、あわせて画像資料の歴史研究における有効性も実証したい。

 

報告:

1910年代から40年代にかけて流布した地図、案内図、絵葉書など膨大な画像資料をもとに、日本人が抱いた「満州」幻想が辿られた。日露戦争後の近代ツーリズムの成立・発展と重なりつつ、満州「幻想」が変化・差異化・拡大していくさまが、当時のヴィジュアル・メディアの数々を通して明らかにされた。その流布した画像資料の数に圧倒されつつ、大衆が「満州」各都市の表象を享受するなかで、「夢の大地」へと誘う都市空間の心的イメージが形成された過程を体感することができた。

安井眞奈美「出産の習俗と怪異伝承――うぶめの絵を手がかりに」

要旨:

18世紀、日本でさまざまな妖怪が描かれて人気を博した頃、妊娠中・出産時に亡くなった女性の妖怪であるうぶめ(産女・姑獲鳥)も描かれるようになった。妖怪画は、江戸時代に妖怪を娯楽の対象として楽しむようになった大衆文化の一端を表しており、その中でうぶめの絵は、当時の出産・産後の習俗を示す資料としても読むことができる。この講義では、妊娠から出産、産後にかけての習俗や伝承を紹介し、生児を産み育てていくことが難しかった時代に、人々がどのような知恵や工夫をもって生き抜こうとしてきたのかを読み解いていく。あわせて、近代から現代にかけて、出産のあり方が大きく変容する中で、出産の習俗や、人々のいのちに対する意識がどのように変わってきたのかについても考察したい。

 

報告:

うぶめという女性の妖怪を出発点に、近世・近代・現代の図像、文献・モノ資料などを縦横無尽に、かつ、ていねいに読み解きながら、妊娠、出産、子育て、あるいは乳幼児や妊産婦の死など出産をめぐる習俗の数々が説明された。子どもの分身として胞衣(胎盤)を埋めるという産後習俗の変遷、19世紀末まで続いたといわれる間引きという習俗などの興味深い事例が紹介され、各時代の出産習俗における知恵や考え方が示された。

(報告:前川志織)

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