古代・中世班 H29年度共同研究会③レポート

古代・中世班 H29年度共同研究会③レポート

研究代表者:荒木浩
開催日時:平成29年9月23日(土)・24日(日)
開催場所:国際日本文化研究センター第5共同研究室
参加人数: 15名+オブザーバー若干名
報告:
古代・中世班のH29年度第3回共同研究会は、9月23・24日の2日間にわたって行われた。古代・中世班リーダーの荒木浩(日文研)から参加者に向けて、第2回研究会の研究成果、11月に開催される第4回研究会のプログラム概要、さらに大衆文化プロジェクト古代・中世班の具体的な開催予定に関する説明が行われた。これに基づき、参加者の間でプロジェクトの今後の推進について話し合われた。

初日の報告は呉座勇一(日文研)が招聘したDaniel Schley(ダニエル・シュライ、ボン大学)の「日本初期中世の歴史意識と王権―将門記から神皇正統記まで」だった。日本中世における仏教的末法思想・神国思想・儒教的徳治思想の共存/緊張関係の歴史的展開を、『将門記』『大鏡』『愚管抄』『六代勝事記』『神皇正統記』など多様な史料の分析を通じて論じた、非常に興味深い報告だった。また、『愚管抄』作者の慈円と、同じく12世紀を生きたドイツの歴史家であるフライジングのオットーとの比較という視点は、海外の日本研究者ならではのもので、「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」を目指す本プロジェクトに裨益するところが大きいと考える。Schley報告に対してはディスカサントの呉座勇一が日本中世史の立場から「神国」概念の変遷についてコメントを加えた。総合討議では「王権」概念の定義をめぐって活発な議論が交わされた。

2日目の1本目の報告、金容儀(全南大学校、日文研外国人研究員)「柳田國男『遠野物語』の文化コンテンツとしての拡散と受容」は、昨今の妖怪ブームの中、改めて脚光を浴びている柳田國男『遠野物語』が小説・絵本・漫画・映画などにおいて、どのように利用・再構成されてきたかを網羅的に分析したものである。討論では文学、民俗学、歴史学など分野を異にする多様な参加者が各々の関心から意見を述べ、しばしば「日本人の心のふるさと」と評される『遠野物語』の豊かな可能性を再認識させられた。

2本目の報告、徳永誓子(岡山大学)の「五来重の修験道研究」は、民俗学者五来重の代表的な研究とされる修験道研究が、盲僧琵琶や踊念仏など五来の他の研究と比して過度に経験主義的で(自らの修行体験を重視)、歴史的展開を軽視した本質論(「日本宗教の原点」「原始宗教」)に陥っていることを指摘し、その要因を詳細に論じた。徳永報告は、五来の著述の大半を刊行した角川書店(角川源義)との関係についても言及し、この論点に関しては特に多くの意見が参加者から寄せられた。

国際的・学際的な視点から日本像を再検討することができ、実りある2日間であった。

以上
(呉座勇一)

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