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2018.2.12 国際日本文化研究センター・京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 共同シンポジウム「浪花節と講談の関係を探る」レポート

2018.2.12 国際日本文化研究センター・京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 共同シンポジウム「浪花節と講談の関係を探る」レポート

【開催日時】: 平成30年2月12日(月・振替祝日) 13:00~17:45
【テーマ】: 浪花節と講談の関係を探る
【主催】: 国際日本文化研究センター・京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター
【場所】: 国際日本文化研究センター 第5共同研究室

本シンポジウムは、平成29年9月に日文研と京都市芸大伝音センターとの間で学術交流協定が締結されたことにより実現したものであり、時田アリソン同センター所長(運営委員会委員)の退任記念を兼ねる同センター主催「軍記語り物週間」(平成30年2月8日~15日)の一部として開催された。
小松和彦所長の挨拶の後、ローマ・サピエンツァ大学マルティデ・マストランジェロ教授による基調講演を皮切りに浪花節(浪曲)・講談を取り巻く研究について多角的な発表・討議を行った。
マストランジェロ教授は、説教節に登場する女性の描かれ方を読み解き、説教節の物語における女性の役割の変遷について講演を行った。時田教授は長年のフィールワークの成果である浪曲演目の分析に基づき、講談に題をとった浪曲の占める割合や傾向を明らかにした。真鍋教授の発表は、従軍浪曲師の誕生や乃木伝はじめ戦争を題材にした数多くの浪曲演目を具体的に挙げながら、国家戦争が語り芸に与えた影響を浮き彫りにした。古川特任助教は日文研が大衆文化プロジェクトのもと取り組んでいる浪曲SPレコードのデジタルアーカイブについて報告した。
また講談師の四代目旭堂南陵氏(大阪芸術大学客員教授)は、明治大正期に講談の演目をわかりやすい物語に変換することで大衆の支持を得て発展した浪曲について、速記本や新聞記事など具体的かつ貴重な資料を提示しながら発表を行った。自身も浪曲の曲師として活躍する北川教授は、譜面のない浪曲の三味線演奏を譜面におこし楽曲分析を行うと同時に、レコード音源を中心に一つの講談演目が何人もの浪曲師の演出を経て浪曲化する事例を挙げ、講談と浪曲の密接な関わりと違いを述べた。最後に細川教授が日系ブラジル人浪曲師の存在と彼らによる偉人伝浪曲の誕生などから、移民社会の中で大衆に支持される語り芸として発展した浪曲の実像を明らかにした。
限られた時間ではあったが活発な議論が展開され、とりわけ旭堂南陵氏は実演家の観点から積極的に意見を述べ、議論の展開に大きな役割を果たした。研究者と実演家のどちらにも刺激に富む、今後の浪曲・講談研究を考察する上でも重要なシンポジウムとなった。

(古川綾子)

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