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近世班 平成29年度研究会②レポート

近世班 平成29年度研究会②レポート

研究代表者: 小松 和彦
開催期間: 平成29年11月18日(土)
開催場所: 国際日本文化研究センター 第5共同研究室
出席者: 17名+オブザーバー若干名
報告:

近世班の第2回研究会として、最初にリーダーの小松和彦から参加者に向けて、大衆文化プロジェクトにおける本研究会の位置付けの確認および第1回研究会(公開シンポジウム)とヴェネチア大学との連携企画ワークショップの成果報告、さらに今後の展開に関する説明が行われた。その後、国内からの2名の報告者による報告を得た。
報告1の香川雅信(兵庫県立歴史博物館主査/学芸員)「鬼魅の名は―〈妖怪バブル〉としての近世―」は、古代・中世の「妖怪」が天狗や鬼といった普通名詞的な表現で記されているのに対し、近世では個別の「名づけ」が行われていく流れを考察した。また、これまで報告者が注目してきた博物学的な視点に、地誌や俳諧書を新たに組み込むことによって、近世段階における「妖怪」文化の展開を考える新たな視点を提示した。
報告2の木場貴俊(日文研プロジェクト研究員)「開かれた化物絵」は、見る者が限定される媒体であった絵巻物が江戸時代出版されることでその内容が公開されたことを踏まえ、化物が描かれた絵画類(化物絵)の展開を検討した。特に、挿絵や絵手本などに注目することで、江戸時代絵画史における鳥山石燕の作品群などの位置付け、また絵画と情報の関係性などを考察した。
総合討論では、二報告に共通した近世における出版・書物と「妖怪」を含む大衆文化との関係を中心にした活発な議論が行われた。近世の「妖怪」文化を考える際には、出版・書物を外せないことを改めて確認した上で、①出版を企図する者たち、②読者、③情報・知識の収斂・展開、④解釈、⑤利用方法など、多岐にわたる論点が出された。以上の議論を踏まえ、①近世における「妖怪」文化の特性を継続して明らかにしていくこと、②さらには「妖怪」が重要な位置を占める近世の「大衆文化」についてより広く考えていくために、今後は「俗」の観点を組み込んだ研究を行っていくことが、出席者間で共有された。
総合討論に参加したコメンテーターは以下の通りである。飯倉義之、佐々木高弘、常光徹、永原順子、福原敏男、横山泰子。

(木場貴俊)