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近世班研究会②レポート

近世班研究会②レポート

研究代表者
小松 和彦

開催期間
平成29年3月18日(土)

開催場所
国際日本文化研究センター 第5共同研究室

内容成果
近世班の第2回研究会として、リーダーの小松和彦から参加者に向けて、大衆文化プロジェクト全体の構想および第1回研究会の成果報告、さらに今後の展開および具体的な開催予定に関する説明が行われた。その後、国内からの2名の報告者による報告を得た。

報告1の貞包英之(山形大学 准教授)「朝顔の予言・再考 ―消費を考える」は、これまで報告者が蓄積してきた18、19世紀の消費をめぐる歴史社会学的な議論を下敷きとし、放蕩や趣味といった広義の「消費」活動についての考察を展開した。そして、庶民層にまで園芸趣味が普及していく過程で「黄色い朝顔」などの幻想的な商品が創造されていく文化的な現象の中に、その後、本格的に訪れることになる消費社会の先触れとしての意味が汲み取れるのではないか、という興味深い視点が提示された。

報告2の横山泰子(法政大学 教授)「三遊亭円朝の怪談噺における近世と近代」は、円朝怪談の後世への影響をも射程に収めた上で、円朝を、江戸四大怪談の半分(牡丹燈籠、累ヶ淵)を「完成」に導いた存在として怪談文化史上に位置付ける試みを行うものであった。報告者は円朝『牡丹燈籠』を例にとり、中国古典における原話が日本を含む東アジア各国へ伝播・変容したことや、近代以降、円朝『牡丹燈籠』が複数言語に翻訳されていることなどを挙げ、円朝を1つの核とした通時的な怪談研究の可能性を示した。

総合討論では近世期における「消費」と、怪異を含む大衆文化との関わりについて活発な議論が行われた。そして、博物学的意味を帯びた本草学の流行、「変化」(奇品)を求める園芸植物の流行、小型愛玩動物の流行などが、近世期における「妖怪」の爆発的なバリエーションの増加とも軌を一にしているであろうことが確認された。また金銭のために人を殺める怪談の一般化や、金銭を払って擬似的に「恐怖」を愉しむ社会の成立など、近世における消費活動と怪異・妖怪文化との関わり合いが、今後近世班が大衆文化について考えを深めていく際のひとつの指標として出席者間に共有された。総合討論に参加したコメンテーターは以下の通りである。香川雅信、近藤瑞木、佐々木高弘、朴銓烈、福原敏男、マーク・オンブレロ、安井眞奈美、永原順子。

 

【出席者】

香川雅信 兵庫県立歴史博物館 主査/学芸員
近藤瑞木 首都大学東京大学院都市教養学部 准教授
横山泰子 法政大学 教授
安井眞奈美 天理大学文学部 文学部歴史文化学科 考古学・民俗学専攻 教授
永原順子 高知工業高等専門学校総合科学科 准教授
マーク・オンブレロ 関西大学教育推進部 特別任用准教授
福原敏男 武蔵大学 人文学部 教授
佐々木高弘 京都学園大学人文学部 教授
貞包 英之 山形大学 准教授
朴銓烈 中央大学校 名誉教授
小松和彦 国際日本文化研究センター 所長
今井秀和 国際日本文化研究センター 研究補助員
徳永誓子 国際日本文化研究センター 技術補佐員