2017.9.13~16「第28回日本資料専門家欧州協会年次大会」参加レポート
第28回日本資料専門家欧州協会年次大会(EAJRS)参加報告
2017年9月13日から16日にかけて開かれた第28回日本資料専門家欧州協会年次大会(ノルウェー・オスロ大学図書館)に参加しました。今回の大会のテーマは「日本学支援のデジタル対策」で、14のセッション、30あまりの発表が行われました。
私は「国際日本文化研究センターにおける大衆文化研究プロジェクト」の題目で、大衆文化研究プロジェクトの概要及び4つの研究班の活動と各班の研究活動に関連の深い日文研所蔵資料及びデータベースについて紹介しました(英語による発表のため「大衆文化」を「ポピュラー・カルチャー」の語で紹介)。会場からは、さまざまな示唆に富むご意見とともにその意見交換の機会を得ることができました。「ポピュラー・カルチャーという枠組みで日本の文化史を捉えなおすという果敢な取り組みに期待したい」、「ポピュラー・カルチャーには現代のマンガやアニメは外すことができない。それに比して、日文研所蔵資料やデータベースの範囲が限定的すぎるのではないか」など、プロジェクトの推進の仕方についての貴重な意見をいただきました。また、次のような数々の具体的な提案—―「浪曲音源のデータベース化のプロジェクトに、例えばNHKアーカイブスといった他機関の音源のリソースと何らかのコラボレーションを模索することはできないか」「日文研の関連データベースをウェブディスカバリーサービス(グーグルのような形による資料情報の総合検索サービス)に載せて、もっと資料にアクセスしやすくすることはできないか」「例えば江戸の文化には、武士と町人の世界、大衆芸能と大衆文芸の世界が交差する事例を見出すことができる。ハイとローの交差やジャンル横断の観点からの共同研究の場を提供することはできないか」「フィンランドでは日本のポピュラー・カルチャー研究への関心が高まっている。そのリソース、学術的検討のためのツール、研究の組織の仕方や運営についての具体的な助言がほしい」「北米の日本研究ではポピュラー・カルチャーのリソースへのニーズが確実に高まっている。それについての具体的な助言がもらえれば」—―もいただきました。
また参加者の方々の発表では、デジタル対策についてのさまざまな例が紹介され、プロジェクトの今後にとっても大変示唆に富むものでした。ユニークな資料の目録化やそのデジタル化・データベース化、さまざまな資料に出会うための横断検索やイメージ検索のあり方の検討など、日本の資料をめぐるデジタルなあり方についての最新の局面を感じることができました。同時に、北米やヨーロッパ地域、アジア地域における日本のポピュラー・カルチャーについての一般的・学術的関心の高まりに応える学術的手立てが不足している現状を実感する機会ともなりました。この会議に参加することで得た貴重なご意見や情報をプロジェクトに活かしていきたいと思います。
(前川志織)