ページを選択

近代チーム 2019年度第3回共同研究会「音と聴覚の文化史」

近代チーム 2019年度第3回共同研究会「音と聴覚の文化史」

近代チーム 2019年度第3回共同研究会「音と聴覚の文化史」

「音と聴覚の文化史(通称:音耳班)」共同研究会の最終回は、7名の登壇者による盛りだくさんの報告内容。活発な議論が交わされる賑やかな学びの場となった。

 

初日の14日(土曜)は、発表タイトル「《赤とんぼ》の戦後―表象の山田耕筰試論」からスタート。ゲストスピーカーの栫大也氏は、山田耕筰に関わる言説を中心に、日本近現代の音楽史を研究している。発表では、山田に関する近年の研究、とりわけ社会における山田の表象を整理した上で、戦後から現在に至るまでの映画のなかで童謡《赤とんぼ》がどのような役割を担ったのか時系列的に紹介した。

続いての発表は、ベトナムのゴング文化などを研究するゲストスピーカー柳沢英輔氏。「フィールドレコーディングの実践を通した音響民族誌の可能性」というタイトルで、自身が取り組む『「フィールド」を録る』活動について発表した。この活動は、「場所の特徴的な響きを探る/聞こえないモノ・振動を可聴化する」ための手法。柳沢氏は、南大東島での事例を示しつつフィールドレコーディングとはどのようなものか、そしてどのようにして行うのか、そのほかの民族学研究の手法との違いも含めて詳しく言及。フィールドを録ることによって展開する音響民族誌研究の今後についても示唆を加えた。

初日の最後を飾ったのは、金子智太郎氏。聴覚の文化という観点から芸術と技術の関係について研究している金子氏は、「市民による音づくり―荻昌弘のオーディオ批評」と題し報告した。映画批評家・オーディオ評論家としても知られる荻昌弘が、1970年代に日本で流行したオーディオ文化である「生録」論をどのように形成していったのか、1850年代以降の荻の評論活動の経緯をたどりつつ、他の音響技術論とのかかわりの中で考察した。

2日目(15日)は、東アジアの現代都市社会における音楽活動を研究対象とする辻本香子氏の報告からはじまった。辻本氏は「アジアの市街地における芸能/スポーツとしての龍舞」と題した報告をおこなった。報告では、〈香港のある龍舞チームが、スポーツ性を重視し、場当たり的な対応を繰り返しながらも、なぜ香港を代表するようなチームとして活躍することができたのか?〉という問いのもとに、龍舞における音と楽器、龍と楽器による音環境との相互影響を紹介するなかで、香港社会での「中国伝統芸能」のとらえられ方と、芸能における音の役割について検討した。

続いて、音楽ジャーナリストの横井一江氏は「オフサイトの脱神話化―オフサイト、オンサイト」と題した報告を行った。2000年から2005年のあいだ、東京・代々木でギャラリー/フリースペースとして運営されていたOFF SITE。即興や実験的音楽の演奏活動も導入した幅広い演奏活動、出演ミュージシャンのつながりや特徴、さらにOFF SITE運営前後の音楽シーンの様子について、実際の音楽も取り入れつつ、実体験や関係者へのインタビューなどをもとに紹介した。

次いで、青嶋絢氏は2本立てテーマで報告をおこなった。「サイトスペシフィックな音の表現―80-90年代の芸術祭史からたどる」では、1980から90年代の「JAPAN牛窓国際芸術祭」や、「アートキャンプ白州」などで発表された音の作品やパフォーマンスの事例、そしてそれらの作品はその後どのような展開を遂げたのかについて紹介。つづく「『音の表現』に関わる場―80-90年代 関西の状況」では、機関紙「Sound Arts」を骨子に、神戸にあるジーベックホールを中心に広まりを見せた、美術からの音・音楽への接近について言及した。

酉を飾ったのは本研究会・代表者の細川周平氏。「昭和初期の騒音低減運動」というタイトルで、戦前日本において騒音はいかにして社会問題化し、騒音低減運動はいつどのように始まったのか、さらにテクノロジーの学問である工学はどうやって個人の生活に関与しうるのか?という問いに対し、新聞など当時の一次史料を提示しつつ、文化史的な切り口から騒音低減運動の変遷や特徴について語った。

本研究会最後には、全体の統括、さらに来年度出版予定の成果報告集についての話し合いも行われ、活発な意見交換のもと盛会裡のうちに閉会した。

(特任助教 光平有希)

 

プログラム詳細:

音と聴覚の文化史 2019年度第三回共同研究会

2020.3.14-3.15  第5共同研究室

 

2020年3月14日(土曜)

13:00-14:00

栫 大也(九州大学)「《赤とんぼ》の戦後―表象の山田耕筰試論」

 

14:15-15:15

柳沢英輔(同志社女子大学)「フィールドレコーディングの実践を通した音響民族誌の可能性」(仮題)

 

15:30-16:30

金子智太郎(東京芸術大学)「市民による音づくり――荻昌弘のオーディオ批評」

 

16:45-17:45

総合討議

 

2020年3月15日(日曜)

10:00-11:00

辻本香子(日本学術振興会)「アジアの市街地における芸能/スポーツとしての龍舞映画 再論」

 

11:15-12:15

横井一江(ジャズ・ジャーナリスト)「オフサイトの脱神話化―オフサイト、オンサイト」

 

昼休み

 

13:15-14:15

青嶋 絢(大阪大学文学研究科博士課程)「サイトスペシフィック・アートと音の表現 – 80-90年代の芸術祭・アートプロジェクト史から辿る」  (仮題)

 

14:30-15:30

細川周平(国際日本文化研究センター)「昭和初期の騒音低減運動」

 

15:45-17:00

「報告書出版に向けて」

 

サブカテゴリー

研究班

月別アーカイブ