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【レポート(近代チーム画像班分科会)】共催研究会:大正イマジュリィ学会第46回研究会(第1部「大正イマジュリィ研究とデジタル・アーカイヴ」ほか)

大衆文化研究プロジェクトの画像班分科会では、近代日本における大衆的図像資料についての研究活動の一環として、大正イマジュリィ学会との連携活動に取り組んでいます。

今回の研究会・第1部の趣旨は、「大正イマジュリィ研究とデジタル・アーカイヴ」と題し、戦前期日本の大衆的図像についての研究者やコレクター、アーカイブズ関係者が集まり、データベースやアーカイヴ(ズ)に関する基礎的な共通理解を深め、研究に活用していくにはどのような仕方があるのか、などを考えるというものでした。また、日文研の大衆文化研究プロジェクトに関連するデータベースについてご紹介し広く議論する機会ともなりました。

佐藤守弘氏(京都精華大学)による「アーカイヴについての基本的な解説」では、「アーカイヴズ」と「アーカイヴ」の言葉の由来や、博物館・図書館・文書館における資料の捉え方の違いなど、基礎的な事項を確認した上で、ニューヨークにおける3つの施設(ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ニューヨーク公共図書館)の事例から、現在のデジタルアーカイヴの各動向の特徴が確認されました。

水島久光氏(東海大学)による基調講演「デジタルアーカイブと一次資料の“悩ましい”関係について」では、グローバルな動向の中での日本のデジタルアーカイブ環境の変遷、ヨーロッパにおけるeuropeanaの動きとその特徴をたどることでわかりやすく整理された上で、「アーカイブ/データベース/デジタルアーカイブ」それぞれの概念とその関係性について、今日のデジタルアーカイヴが、europeanaの先駆例を踏まえた上で、メタデータの標準化とそれを収集するアグリゲーション機能の徹底による「網羅性」と「公開性」が志向されるようになったこと、これを実現するにはトップダウン式を採用する場合の多いこと、さらにその方式・動向からこぼれ落ちた問題、特に「資料は複写してしまえばいいのか」「一次資料の価値とは何か」という問いに目を向けることの重要性が提示されました。最後に、「「アーカイブ」と「コレクション」のあいだ」として、「些末なことがら」の痕跡の集合体(コレクション)としての資料性へと目を向けることの重要性、そして、その一例としての「大正イマジュリィ」とそのアグリゲーション組織(仲介者)の可能性が提起されました。

次に、ケース・スタディーとして、日文研におけるデータベースの取り組み3例が紹介されました。前川志織(国際日本文化研究センター)は「日文研の大衆的図像関連データベースについて」として、「外像」「古写真」「朝鮮写真絵葉書」各データベースの特徴・使用法・使用の際の問題点を紹介しました。

古川綾子氏(国際日本文化研究センター)の「日文研の浪曲 SP レコード・デジタルアーカイブ(2020年度公開予定)について」では、大阪府立上方演芸資料館や桂米朝コレクションなどのこれまでに携わられている上方芸能文化のアーカイブ業務、国立国会図書館「歴史的音源」や九州大学総合研究博物館におけるSPレコード・コレクションについての調査事例を交えつつ、日文研での浪曲SP レコード・デジタルアーカイブを取り巻く文化環境・本DBの設計の詳細、今後の展望について示され、最後に、試作版の画面閲覧およびコンテンツの視聴が行われました。

石上阿希氏(国際日本文化研究センター)の「日文研の近世期絵入り百科事典DB(試作版)について」では、本DBの着想として、実業家・民俗学研究者の渋沢敬三(1896-1963)による「絵引」の構想と「実業史錦絵絵引データベース」(https://db.ebiki.jp/)などの事例が説明され、本DBの設計について、トップ画面にサムネイル画像一覧を提示することで、このDBにはどういう情報が含まれているかを一目でみることのできる工夫などが紹介されました。また今後の展望として、英語版やIIIFの導入、解説、参考文献などを付すことによるコンテンツの充実などが提示されました。

最後に、熊倉一紗氏(京都造形芸術大学)の「大正イマジュリィに絡むデジタル・アーカイヴの紹介」では、国内における絵はがき、ポスターや広告のデータベースについて、ネット画面を見せながら、丁寧に解説されました。

高畠麻子氏(高畠華宵大正ロマン館)の司会によるディスカッションでは、コーディネーターの岸文和氏(同志社大学)による「大衆的図像の一次資料の保存と公開についてどのように考えるか」という質問、司会者による「資料のモノとしての側面と、デジタル化するにあたってこぼれていく情報との関係をどう考えるか」という質問について、各発表者や会場において意見交換がなされました。そのほか、公開をしない「ダーク・アーカイブ」という考え方、保存の欲望とは逆のベクトルによる資料がなくなることによる想像力の問い、大衆的図像には大量性に支えられた独特のコレクションの欲望が備わっていること、europeanaなどの動向を「資料発見のための窓」として捉えること、などさまざまな観点が提出されました。

 

第2部では、「「戦間期東アジアにおける大衆的図像の視覚文化論」国際シンポジウム総括公開円卓会議」を開催しました。その趣旨は、大正イマジュリィ学会はこれまで、広告レトリック研究会(科学研究費助成事業[基盤研究C]研究代表者・岸文和)などと連携し、合計9回の国際シンポジウムを開催してきましたが(日文研との連携は第8回から)、この研究会において、円卓会議(ラウンドテーブル・ディスカッション)をオープン開催し、総括を行うというものでした。特に、⑴様々な商品の新聞広告の通時的な変化、⑵国内/国外における新聞広告の現地化、⑶新聞広告と視覚文化の隣接領域との共時的な関係について、という今後進展させていくべき3つの論点に注目し、ディスカッションを行いました。

司会の岸文和氏(同志社大学)による、仁丹が初めて写真広告を掲載した1912(大正元)年114日朝日新聞の紙面における広告図案、肖像写真、報道写真、新聞小説挿絵といった多彩な視覚的形式が混在している事例などの説明を導入とし、熊倉一紗氏(京都造形芸術大学)「日本におけるポスターデザインの変遷」「洋酒製造販売会社・壽屋の新聞広告デザインの変遷」、向後恵里子氏(明星大学)「絵葉書:イメージの交通」、佐藤守弘氏(京都精華大学)「戯画・漫画表現の変遷:メディアを中心に」、高畠麻子氏(高畠華宵大正ロマン館)「「中将湯」広告をめぐるいくつかの考察」「日本近代における表紙絵挿絵の変遷」、松實輝彦氏(名古屋芸術大学)「モダニズム期日本の新聞広告写真の変遷」、前川志織(国際日本文化研究センター)「戦間期東アジアにおける森永製菓の新聞広告の変遷」「明治期の文芸雑誌と図案教育にみるアール・ヌーヴォー」、と各自報告が行われ、天内大樹氏(静岡文化芸術大学)によるプレゼンテーションの工夫により、関連する図版をその都度皆で確認しながら、活発な意見交換がなされました。

(前川志織)

 

図1 「europeanaトップ画面」(https://www.europeana.eu/portal/en)2019年9月2日閲覧

図2 「近世期絵入百科事典DB(試作版)トップ画面」(http://kutsukake.nichibun.ac.jp/EHJ/)2019年9月2日閲覧

図3 『朝日新聞』1912(大正元)年11月4日より

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