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【レポート(現代チーム活動)】(2019年1月14日〜2月14日)MANGAlabo6 兼 若手研究者海外派遣プログラム報告「イメージとメディアにおける歴史とドラマの表現をめぐる北米先端メディア理論研究」

【レポート(現代チーム活動)】(2019年1月14日〜2月14日)MANGAlabo6 兼 若手研究者海外派遣プログラム報告「イメージとメディアにおける歴史とドラマの表現をめぐる北米先端メディア理論研究」

MANGAlabo6 兼 若手研究者海外派遣プログラム報告「イメージとメディアにおける歴史とドラマの表現をめぐる北米先端メディア理論研究」

 

コンコルディア大学・モントリオール(2019年01月14日-02月14日)

 

アルバロ・エルナンデス(Álvaro D. Hernández Hdz.)

日文研 プロジェクト研究員

 

この度、日文研プロジェクト研究員アルバロ・エルナンデス(Álvaro D. Hernández Hdz.)は、英語圏における日本メディア文化の研究において一つのトレンドを形成し、研究をリードしてきたマーク・スタインバーグ准教授とトーマス・ラマール准教授、その他の研究者と直接議論することを目的とした、「イメージとメディアにおける歴史とドラマの表現をめぐる北米先端メディア理論研究」という研究課題のためにモントリオールに派遣された。具体的には、「イメージとメディア」は基幹研究プロジェクトの対象である漫画やアニメーションを指し、「歴史とドラマ」はそうしたメディアにおける物語性・ドラマ性(フィクション)、そしてメディア史と研究上の方法論のことを指す。

訪問先のコンコルディア大学とマギル大学において、上記の研究課題を以下の側面からアプローチした。1)イメージとメディアの哲学。2)日本メディア産業論。3)日本文化・社会論。研究期間中、コンコルディア大学とマギル大学の研究者からガイダンスを受け、議論やインタビューを行ったり、学生と交流、授業などを聴講することによって、上述の三つの側面を踏まえた調査研究を行うことができた。

その研究活動の内容は①ワークショップの企画と開催、②面談やインタビュー、と③講義の聴講や研究グループの見学であった。

 

①MANGAlabo6 ワークショップについて

2月1日~2日に、コンコルディア大学と日文研の共催による「MANGAlabo6 Media Production as Media Theory Workshop」を開催した。10名の報告者には、コンコルディア大学のマーク・スタインバーグ准教授とマギル大学のトーマス・ラマール准教授とその他の研究者の他に、セントルイス・ワシントン大学(米国)のダイアネ・ウエイ・レウイス助教、日文研の金日林外国人研究員、東京大学大学院の鈴木麻記氏、そしてメキシコのメトロポリタン大学大学院のラウラ・キロス氏が出席し、それぞれの研究を報告した。本ワークショップでは、ラマールとスタインバーグ両准教授とその周囲の研究者と直接議論し、彼らが欧米で展開しているメディア理論とその理論が対象としている日本大衆文化との整合性を検証することができた。

 

 

->プログラムのPDFをダウンロードする。2019.1.13-Media Production ABSTRACTS

②面談やインタビューについて

面談やインタビューを合計7名に行なった。その中でも以下のものは特に重要であった。

トーマス・ラマール准教授と5回面談を行い、その内4回はインタビュー(それぞれ2時間程度)を行なった。インタビューはThe Anime Ecology: A Genealogy of Television, Animation, and Game Media (Minesota Press 2018)の内容と課題を中心に行なった。

マーク・スタインバーグ准教授と4回面談を行い、その内3回はインタビュー(それぞれ1時間程度)を行なった。インタビューはThe Platform Economy:How Japan Transformed the Consumer Internet (Minesota Press 2019 Spring) の内容と課題を中心に行なった。

コンコルディア大学のGlobal Emergent Media LabのディレクターJoshua Neves氏とClemens Apprich氏(派遣ポスドク)と1回面談。テーマは「メディアとパラノイア」や「ポストメディア」といった現在上記の2名が進めている最新メディア論を中心に行なった。

コンコルディア大学歴史学科Matthew Penney准教授から一回ガイダンスを受けた。テーマは「歴史と物語」の研究の基本文献やアプローチ方法であった。

③講義の聴講や研究グループの見学などについて

講義の聴講や研究グループの見学を合計5回行なった。その中で以下のものは特に重要であった。

マギル大学、トーマス・ラマール准教授のゼミを聴講(3回)。テーマは「Inventing the Modern Japanese Novel」(妖怪とメディア論)。

コンコルディア大学、Global Emergent Media Labの読書グループに参加。テーマはYves Citton の「The Ecology of Attention」。

コンコルディア大学、Phillip Domicik博士後期課程の博士論文試験を聴講。テーマは消費と歴史、「参加型歴史」やファン文化など。

 

基幹研究プロジェクトにおいてこの派遣が果たした役割

 

この派遣の成果はH29年度の基幹研究プロジェクトの外部評価で強調された北米(英語圏)との交流の必要性といった指摘に応えるものであり、同基幹研究プロジェクトに貢献することができた。基幹研究プロジェクト「日本大衆文化研究」の一つの研究対象は、日本文化の表現の歴史における漫画と視覚文化の研究である。コンコルディア大学とマギル大学で出会った研究者や学生は、英語圏におけるそうしたフィールドの一つのトレンドを代表している。この度、ワークショップなどによって、彼らが発展させている研究の方法論を確かめ、本基幹研究プロジェクトの「通時的・国際的研究」といった展望との整合性を確認することができた。2月23-24日に日文研で、行なった共同研究会でその成果を共同研究会のメンバーと共有した。日文研の招聘でカナダを訪問した日本・韓国・米国・メキシコからの報告者は、本研究基幹プロジェクトとの協力における実績をすでに持っており、コンコルディア大学やマギル大学との交流の場を作ったことによって、今後の新たな研究交流への道を開くための準備に貢献することができた。

 

所属機関における学術分野に貢献する事項

 

学術分野の面においては、以下の貢献が指摘できる。海外の日本現代大衆文化への注目を重視するいわゆる「クール・ジャパン」をめぐる議論においては、国内の日本研究と海外(特に英語圏)の日本研究との間のミスマッチの問題がある。日文研の本研究プロジェクトは、漫画やアニメーション研究において日本国内の日本研究の方法論を用いながら、海外の研究トレンドで採用される「メディア・ミックス」や「プラットフォーム」などの用語も採用する。この活動には、マーケティング中心主義である「クール・ジャパン」のような日本研究への批判を唱えながら、海外の漫画や日本大衆文化研究者との交流を促進する目的もある。この派遣で行なった研究はその課題を通して、国内外の方法論を検討したため、日文研における漫画や日本大衆文化の「国際的な」研究に貢献するだろう。

 

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