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古代・中世班 H30年度共同研究会②レポート

古代・中世班研究会レポート(平成30年度第2回)

 研究代表者:荒木浩

開催日時:平成30年7月28日(土)13:30~18:00、同29日(日)9:30~13:00

開催場所:国際日本文化研究センター第5共同研究室

出席者:16名+オブザーバー6名

大衆文化プロジェクト古代・中世班共同研究「投企する古典性―視覚/大衆/現代」(代表:荒木浩)による平成30年度第2回の研究会では、下記の4つの研究報告が行われた。

 

7月28日

<報告1>

河東仁(立教大学)

「震災復興と伝統的民俗芸能~宮城県南三陸町を中心に~」

東日本大震災において激甚な打撃を受けた宮城県南三陸町の復興過程において、伝統的な民俗芸能が如何なる役割を果たしたか(しているか)、その一端を析出することを目的とする。そのさい出発点に置いたのが、この地で復旧期から言われていた「文化は流されなかった」という言葉である。そしてその意味を、波伝谷(はでんや)地区の獅子舞の復活を巡って生じたさまざまな期待と葛藤、水戸辺(みとべ)地区にて震災以前に300年ほどの空白期を経て再興された鹿子躍(ししおどり)を介して考察した。ことに後者は、東北各地に広まる鹿踊(ししおどり)発祥の地とされながら一端は途絶え、現代になって再興された経緯がある。それだけに、水戸辺地区のみならず、鹿踊が伝わる地において、復興活動に大きな力を与えるものとなっている。(河東仁)

<報告2>

板坂則子(専修大学・日文研私学研究員)

「艶書往来『文のはやし』攷―最も読まれた春本に見る実用性と娯楽性」

艶書往来「文のはやし」は、男女の艶書を下段に、性にまつわる知識や情交法の指南等を伝授する文を上部の頭書に付けた、女子用往来文の型に倣った春本である。報告では約90作の「文のはやし」を分類、提示した。これらは十返舎一九『文しなん』、溪斎英泉『文のはやし』を皮切りに文政中頃から相次いで刊行され、次第に娯楽性を強めて明治の中頃まで読まれ続けている。現存量の多さ、春本では珍しい改刻版の多さなどから、江戸期に於ける最も多く享受された春本として「文のはやし」を取り上げ、その実用性と娯楽性の変遷を考察した。(板坂則子)

 

7月29日

<報告3>

ローレンス・マルソー(日文研外国人研究員)

『伊曽保物語』―翻案、図像、古典性―

近年再発見された巻子本『伊曽保物語』の翻刻、注釈、解説作業を中心としているプロジェクトの中間報告である。この奈良絵本・絵巻『伊曽保物語』は、古活字版・整版本として流布したいわゆる仮名草子版と同じ構成を持っている。本文は仮名草子諸版と大同小異である。絵巻では、挿し絵が巧妙に描かれ、色彩豊かしかも緻密に作成され、豪華な物語絵巻になっている。この意味では、日本の古典文学作品と同じように扱われたと推測できる。版本の挿絵は、舞台を日本に置き、イソポが地中海諸国を回るところを東アジア諸国に設定している事に対し、絵巻に描かれている「世界」は、「唐」に統一している。人物の容姿や衣裳、建造物、調度品なと、「唐」と同じ描かれ方になっている。この「異国情緒」のエキゾチック性も、近世前期の上流階級(豪商、公家、上級武家)に合っていたと思われる。(ローレンス・マルソー)

<報告4>

河野貴美子(早稲田大学)

「近代日中の図書館形成及び図書分類から考える古典研究の問題と可能性」

20世紀前半の北京大学図書館および燕京大学図書館の蔵書形成、また、近代日中の図書館における図書分類のありようを通して、前近代から近代に移りゆく過程で、古典についていかなる思考や取り組みがなされてきたのかを考察し、現在そして今後に向けて、古典や古典研究がいかなる可能性を有するものであるのかについて、検討を試みた。(河野貴美子)