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近代班 H30年度5月26-27日 共同研究会 レポート

近代班 H30年度5月26-27日 共同研究会 レポート
研究代表者 細川周平
開催期間 平成30年5月26, 27日
開催場所 国際日本文化研究センター  第5共同研究室
内容成果 平成30年度に入り、日文研にて初めて開催された今回の「音響と聴覚の文化史」共同研究会では、2日にわたって4組の研究報告のほか、今後の展開や具体的な開催予定に関する話し合いが行われた。

 

まず、報告1は青嶋絢氏(大阪大学文学研究科博士後期課程)による、「丹後のサウンドプロジェクトを辿る:《日向ぼっこの空間》から「古代の丘の遊び」、ART CAMP TANGOまで」であった。本報告では、報告者も企画に携わり2017年9月に丹後で行われた「ART CAMP TANGO アーカイブ・プロジェクト」の活動内容を骨子としながら、そこに至るまでに丹後で行われてきた《日向ぼっこの空間》や「古代の丘の遊び」というサウンドプロジェクト、または同地に根付く文化的資源との影響関係に視点が向けられていた。青嶋氏は、画像や映像を多く交えながら、丹後の地でサウンドプロジェクトに関わった人々の体験と記憶を通じ、アートやアーティストの活動が時を経て残す物事について、豊富な情報を基に具体例を示しながら言及した。

 

次いで、報告2では岡崎峻氏(エイリツ電子産業)が、「音響芸術からみる水中の音世界」というタイトルで、水中生物音の芸術的利用を取り上げ、その環境や生態系の認識についての報告を行った。冒頭、岡崎氏は水中音の聴取に用いられるハイドロフォンの構造や特徴を紹介した上で、ハイドロフォン発展中の各時期に聴取された水中音を音源で示しながら、ハイドロフォンと人間との歩みについて深い考察を展開した。続いて、これまで複数のアーティストによって発表された、テッポウエビやアザラシなど水中生物音を利用した数々の音楽作品が紹介され、さらに同報告中には岡崎氏自身が水中で調査収録した種々の生態音を聴き比べるといった場面もあった。「新たな世界認識を得る過程としての『音楽的知覚』」について深く考える場となった本報告後の質疑応答では、多種多様なフィールドを持つ研究者により、活発な意見交換が行われた。

 

続く報告3の谷口文和氏(京都精華大学ポピュラーカルチャー学部音楽コース)による「初期パソコン受容に見る『音楽を作る』ということ」では、パソコンを中心とするデジタル音響機器を用いた音楽制作環境、つまりデスクトップ・ミュージック〔DTM〕が整う1980年代以前に目が向けられ、その中でも初期パソコンを受容した音楽実践に焦点を当てた考察内容が報告された。谷口氏は、当時のパソコン(あるいは、パソコン以前のマイコン)ユーザーの技術への関心の向け方を、同時代の雑誌記事から読み解き、そこに介在する音楽的「制御」の理論を指摘した上で、「制御」を超えた音楽的表現への模索過程、さらにはプログラミングから浮上するミュージシャンシップについて具体例を挙げながら詳細な分析結果を示した。

 

最後に、報告4は細馬宏通氏(滋賀大学人間文化学部)により、「有線放送電話の放送形態と放送のアーカイヴズ化―滋賀県愛荘町の場合―」というテーマで、2015年から始まった愛荘町有線放送の全デジタルアーカイヴズ化を題材とした研究報告が行われた。本報告では、まず有線放送電話の普及過程、愛荘町有線放送(旧秦荘町有線放送)の歴史、スピーカホンの機能(電話機能・放送機能)や放送の内容、さらには放送する側の関係団体・人物など、愛荘町有線放送を理解する上で必要不可欠な背景知識について細かく紹介され、次いで、複数の放送番組例の紹介を通じて、個々の放送内容に介在する高い地誌的資料性、さらには民俗学的資料性の価値性が明らかにされた。有線放送の半ブロードキャスト性と放送内容、そしてその放送内容の価値について論じた同報告は、音のアーカイヴズ化において新しい方向性を見いだす意義深い示唆を含んでいた。

(文・光平有希 国際日本文化研究センター 機関研究員)

 

【プログラム】

共同研究会「音響と聴覚の文化史」2018年度第2回研究会プログラム

研究代表 細川周平

2017年5月26日(土)~27日(日)

於 第五共同研究室

 

2017年5月26日(土曜)

13:00-14:30 青嶋絢 (大阪大学文学研究科博士後期課程)

「丹後のサウンドプロジェクトを辿る:《日向ぼっこの空間》から「古代の丘の遊び」、ART CAMP TANGOまで」

(休憩)

14:45-16:15 岡崎峻(エイリツ電子産業)

「音響芸術からみる水中の音世界」

(休憩)

16:30-18:00 谷口文和(京都精華大学ポピュラーカルチャー学部音楽コース)

「初期パソコン受容に見る『音楽を作る』ということ」

 

2017年5月27日(日曜)

10:00-11:30 細馬宏通(滋賀大学人間文化学部)

「有線放送電話の放送形態と放送のアーカイヴズ化:滋賀県愛荘町の場合」

 

11:30-12:00 自由討議、今後の予告

 

出席者

 

【出席者】

氏 名 所 属  
細川 周平 国際日本文化研究センター 教授
光平 有希 国際日本文化研究センター 機関研究員
青嶋 絢 大阪大学文学研究科博士課程(後期) 大学院生
秋吉 康晴 京都精華大学 非常勤講師
岡崎 峻 エイリン電子産業株式会社 エンジニア
柿沼 敏江 京都市立芸術大学音楽学部 教授
葛西 周 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 兼任講師
春日 聡 多摩美術大学 非常勤講師
金子 智太郎 東京藝術大学 非常勤講師
久保田 晃弘 多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科
メディア芸術コース/多摩美術大学 メディアセンター
教授/所長
城 一裕 九州大学芸術工学研究院 准教授
谷口 文和 京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 専任講師
辻本 香子 国立民族学博物館 外来研究員
中川 克志 横浜国立大学・都市イノベーション研究院 准教授
福田 貴成 首都大学東京 都市教養学部
都市教養学科 人文・社会系 表象文化論教室
准教授
細馬 宏通 滋賀県立大学人間文化学部 教授
横井 一江 音楽ジャーナリスト
吉田 寛 立命館大学大学院先端総合学術研究科 教授
長門 洋平 京都外国語大学 非常勤講師
越智 朝芳 立命館大学大学院先端総合学術研究科 研究生

 

 

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